確かその機械は人工の声帯のようなもの。
電気式人工喉頭とか言うらしい。
喉に当てると機械音だけれど、判別できる声がでる。
ただ、じっくり聞かないと聞き取りは難しい。
◇ ◇ ◇
しかしその少年に会ってからしばらく別の人が使っている場面に出会していない。
かなり迷ったが、次のチャンスは何時来るか分からないので、勇気を出して近づいて行った。
○ ○ ○
「あのー、ちょっとお話伺ってもいいですか?」
「私は舌癌で昨年、舌の一部除去手術を受けました。 手術の直前まで舌の全摘と言われており、その時には咽頭も声帯も取ることになると言われていまし た。」
「たまたま直前に様態が変化して、一部切除で済んだのですが、一つ間違えたら声を失っていました。今の状態について、いくつかお聞きしてもいいですか?」
☆ ☆ ☆
勇気を持って話したつもりだが、相手にとっては果たして気持ちのいいものか?
面倒くさい奴がやってきたと思われはせぬかと大いに不安もあったのだ。
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